風邪・インフルエンザ・アレルギーの増加する!?
人間を含め、ほ乳類は本来、『鼻呼吸(びこきゅう)』です。鼻は空気中のホコリや不純物、ウイルスを取り除く、フィルターの役割や、乾燥した冷たい空気を肺に直接入れないために、空気を温め、加湿する機能があります。
口呼吸では、そのような機能が一切働かず、ダイレクトに肺に外気が入ってきます。そのため、口呼吸のお子さんは風邪やインフルエンザなどにかかりやすく、不純物(花粉やホコリなど)もたくさん体内に入ってくるため、アレルギーにもかかりやすいと言われています。
いびきの原因!?
口呼吸の子供は寝ている時も口を開けて寝ています。口をあけていると、舌は重力によって、だらんとノドの方へ落ちてしまいます。そうすると、舌がノドの気道をふさぎ、空気の通り道がせまくなってしまいます。すると、空気がそのせまいのどを通るときに、のどがふるえてゴロゴロ、ガーガーと音がします。それが「いびき」です。 もっとひどくなると、舌が完全にのどをふさぎ、呼吸ができなくなる、『睡眠時無呼吸症候群』になってしまいます。この症状が出ているお子さんは夜中に何度も起きる可能性があります。そうなると、十分な睡眠がとれず、学校生活や勉強にも悪い影響が出る可能性があります。加えて、子どもは睡眠中に成長ホルモンが分泌されて成長していきますが、睡眠が満足に得られないと、成長にも悪影響が起きかねません。
猫背になる!?
口呼吸の子どもは、猫背をはじめ、姿勢が悪い子が非常に多いです。これは、上を向いたほうが、大きな声を出しやすいように、人間は首を上に傾けたほうが、口で呼吸をしやすくなります。首を上に傾けたまま、前を見ようとすると自然と背中が丸くなります。これが猫背になる原因です。猫背になると、腰や肩、首の筋肉にも負担がかかり、疲れやすく、ずっとまっすぐな姿勢をたもてなくなります。そうすると、授業などの学習中にじっとしてられず、集中力の低下を招きます。
正常な顔の発育を阻害!?
正しい鼻呼吸の人は、舌の先端が上の前歯の裏側の歯茎についています。この正しいスポットの位置に舌の先端がついていると、子どもの頭や顔の骨格が成長する時期(5歳から10歳)に、舌が上あごや顔の骨を正しく前方や左右方向へ押してくれます。これにより、本来成長すべき前方、側方方向へ顔の骨格が成長するのです。また上あごの骨の形に合わせて、下あごの骨も形を合わせるように成長するので、上あごの成長が正しい方向に進めば、下あごの成長もスムーズに進み、しっかりとした、しまりのある顔立ちに成長します。
一方で、口呼吸の子どもは、舌がスポットについておらず、だらんと下の歯の裏側に下がっています。すると、舌が上あごを前方や側方に押してくれず、本来成長すべき方向へあごや顔の骨格が成長しません。上あごは本来の前方への成長ではなく、下に向かって骨が成長し、上の歯ぐきが長くなり、笑った時、上唇が歯茎を隠しきれず歯茎が見えてしまいます(ガミースマイル)。また、それに合わせて、下あごの成長も後ろ方向へ進んでしまい、あごの関節(顎関節)に大きな負担がかかり、将来、顎関節症(がくかんせつしょう)になる可能性も高くなります。
虫歯や歯周病のリスク増加!?
口呼吸は常に口に空気が通るため、口の中が乾燥します。お口の中の唾液には、菌が増えるのをおさえる成分が含まれています。口呼吸によって、口の中が乾燥すると、虫歯菌や歯周病菌が増えて、虫歯になったり、歯ぐきが赤くはれて、歯みがきのときに血が出たりします(歯肉炎)。
口臭の原因にも!?
口の中が原因による口臭は、先ほどの『虫歯や歯周病のリスク増加』の原因と同じく、口呼吸により、口の中が乾燥し、歯周病菌をはじめとする、口の中の細菌の増殖により起こります。 ※耳鼻科的疾患や内科的疾患がある場合を除きます
脳の発達への悪影響!?
人間は寝ている間に脳を休めています。 特に子どもの時は、脳の神経細胞の連結(シナプス)を発達させています。 『2.いびきの原因!?』の項目でもご説明したように、口呼吸の人は眠りが浅くなりやすいため、脳の発達にも悪影響を及ぼしやすいと言われています。 特に子どもの時期は、脳の「情緒・記憶」などを司る部分がもっとも発達する時期ですが、その時期に口呼吸で眠りが浅いと、その部分がうまく成長せず、『キレやすい』・『落ち着きがない』など、社会性的に支障を来す可能性が示唆されています。
歯並びの悪化
『4.正常な顔の発育を阻害!?』の項目でもご説明したように、本来、正常な鼻呼吸の人は、舌の先がスポット(上顎の前歯の裏側の歯茎)にあり、これにより、あごや顔の骨格が正常に発達し、永久歯が生えるのに十分な大きさに成長します。
一方で、口呼吸の子どもは、舌の先がスポットにないため、あごや顔の骨格が正常に発達せず、あごや顔の骨格が小さいため、永久歯が生えるのには小さすぎます。そうなると、歯並びが悪化してしまいます。
また、歯並びが悪化する原因は、「あごの骨格が小さいから」だけではありません。 本来、正しい鼻呼吸の人は、食べ物や飲み物、つばなどを飲み込む時、舌がスポットについたまま、舌とのどの筋肉の力だけで飲み込むことができます。この動作を『嚥下(えんげ)』と呼びます。正常な習癖の場合、口周りの筋肉(表情筋)はほぼ動きません。
ところが、口呼吸の人は、舌がスポットについていないため、うまく舌の力が飲み込むために使えず、代わりに唇や頬など顔の筋肉(表情筋)の力を使ったりします。またその時、舌は前歯をグッと前に押したりします。これを『逆嚥下(ぎゃくえんげ)』と言います。逆嚥下によって、本来は歯にかかるはずのない、余計な舌や唇、頬からの力が歯にかかり、歯が変な方向へ移動してしまいます。この時、舌が歯を押す力は約500グラム、唇や頬が歯を押す力は約300グラムです。実は、歯はわずか1.7グラムの力がかかっただけで動いてしまいます。人間は1日に約2000回も飲み込み(嚥下)をすると言われています。毎日2000回も間違った力が働いてしまうことで歯並びを悪くなる大きな原因とも言われています。