前回の続きで今回は「何がいけないのか」1つ1つ見ていきましょう。
目次
歯みがきのNG例
NG①手を大きく動かして、3、4本の歯を一気にみがく
歯ブラシを歯に直角にあてて、横に大きく動かしながら磨く方法を「横磨き」または「水平法」というよく見かけるはに磨き方です。
せっかちな方、細かい手の動きが苦手な方、歯みがきは1分くらいで終わるという方に多いように思います。
この磨き方では、すべての歯を磨いているつもりでも、磨き残しが生じがちです。
特に歯と歯の間にまでブラシの毛先が届きにくいのでその部分に汚れが残ります。
NG②ゴシゴシと力強く磨く
「ゴシゴシ磨かないとスッキリしない」「力強く磨かないと、磨いた気にならない」そんな風に言う方もよくいます。
もしかしたらみなさんの中にも、歯科医院で「磨きすぎですね」と指摘されたことがある方もいるかもしれません。
毎日力強くゴシゴシ磨いていると、歯の表面を覆っているエナメル質を傷つけて内側の象牙質が露出したり、歯茎が退縮することがあります。
歯みがきの時にしみることはありませんか?
あるとすれば、もしかしたら磨き過ぎによる象牙質の露出や歯茎の退縮が知覚過敏を引き起こしているのかもしれません。
NG③磨く順番を気にしていない
- 歯みがきをする時まずどの部位から磨きますか?
- そしてどちらの方向に磨いていきますか?
磨く順番なんて意識したことがないという人も多いでしょう。そうすると、無意識のうちに決まった順番で磨いていて、毎回同じ部分をみがき残しているということがよくあります。例えば、いつも下の前歯から磨き始めて、奥の方に進み、下の歯が終わったら上の歯を同じように磨いていく。何も考えずに癖でそうやって磨いていると、毎回最後のほうは適当になってしまって、上の歯の方に磨き残しが多いかもしれません。
NG④歯の前面だけを磨いている
- 歯の前面だけを磨いて満足していませんか?
前面がツルツルすればスッキリするかもしれません。
でも、歯みがきで大事なのは「歯と歯の間」「奥歯の溝」「歯と歯茎の間」「歯並びがでこぼこしていて重なっているところ」といった歯ブラシ歯ブラシが届きにくいところです。
こうしたところの汚れは唾液でも流されにくく、残りやすいので、意識して汚れを取らなければいけません。
NG⑤歯周ポケットに超極細の歯ブラシの毛先を入れてブラッシング
歯と歯茎の間には、歯の周りを取り囲むように、「歯肉溝」と呼ばれる溝があります。
健康な歯ぐきの場合、溝は2ミリ以内ですが、歯周病になるとこの溝が深くなります。3ミリ以上になると歯周病が疑われ、歯肉溝が深くなったものを「歯周ポケット」といいます
「歯周ポケットNお奥までとどく」「歯周ポケットのうちの汚れを書き出す」そんな表現を耳にしたことがありませんか?
実際、毛先の細い歯ブラシで、歯周ポケットのなかの汚れをかき出すようにブラッシングをしているひとがしている人がいると思います。歯周病がきになる人ほど、良かれと思ってやっているかもしれませんが、これもお勧めできません。
歯ブラシの毛先を歯周ポケットの中までいれようとすると、歯ブラシの先端が歯肉にささってしまうのです。やりすぎると傷になってしまいます。
そもそも、歯周ポケットの中を歯ブラシで汚れを取り除くことはできません。
そのなかの汚れをとるのは歯科衛生士、歯科医の仕事だと思ってください。
NG例⑥歯磨き粉をたっぷりつける
ふだん、みなさんはどのくらい歯みがき粉をつけていますか?
たっぷり載せたほうがよく泡立って爽快感があるかもしれません。歯磨き粉のCMでも、
ブラシの全面にたっぷり載せているのを目にします。でも、爽快感と『ちゃんと磨けているか』はまったく別の話です。
歯みがき粉の目的は、ムシ歯や歯周病、口臭などの原因となる『プラーク』を取り除くこと。このプラークについては、後ほど詳しく説明しますが、簡単に言えば、ねばねばとした細菌のかたまりです。
たっぷり歯みがき粉をつけてみがけば、その爽快感から、スッキリきれいになった気になるかもしれませんが、実際にはまんべんなくみがけていないことが多く、みがき残しが多くなりがちです。
私自身も以前は歯みがき粉を多めにつけていたのでわかるのですが、『口の中が泡でいっぱいになれば終わり』とつい思ってしまいませんか?たっぷりの歯みがき粉ですぐに口の中が泡だらけになれば、歯みがきの時間も短くなってしまう気がします。
歯みがき粉は、歯ブラシのヘッドの3分の1〜半分程度が適量です。多すぎると泡立ちの良さにごまかされて、かえって磨き残しが増えます。
ねばねばとしたプラークは、口をゆすぐだけで取り除けません。ブラシを確実に当てて物理的に取り除かなければ、落とすことはできないのです。
NG⑦逆に、歯みがき粉を使わない
歯みがき粉をたっぷりつける人がいる一方、逆に、歯みがき粉をまったく使わない人もいます。
以前には、歯科医の間でも『歯みがき粉は要らない』と言われている時期がありました。それこそ、過度な爽快感から歯みがきが雑になりがちなので、むしろつけないほうがいいと言われていたのです。また、『歯みがき粉の使用量が虫歯予防などにつながるというエビデンスはない』との意見もありました。
もしかしたら、子どもの頃や若い頃にそんなアドバイスを歯科医院で受けて、いまでも歯みがき粉はつけずにみがいているという方もいるかもしれません。
でも、いまでは、歯みがき粉に含まれているフッ素が再石灰化を促して虫歯の進行を防いでくれるのです。
ですから、歯みがき粉は大切です。ヘッドの3分の1〜半分程度という適量をつけて、ていねいにみがいてください。
NG⑧同じ歯ブラシを半年以上使い続けている
今使っている歯ブラシをいつ買い換えたか覚えていますか?同じ歯ブラシを長く使い続けていると、毛先が開いてきます。毛先が開くとブラシが歯にしっかり当たらなくなり、毎日歯を磨いていても汚れをとりのぞけなくなります。歯ブラシの交換は月に一回が目安です。
NG例⑨電動歯ブラシなのに、手を動かしてしまう
最近では、電動歯ブラシの種類も豊富になって、使用している人も増えました。
ブラシが小刻みに振動して、歯に優しくあてるだけで汚れを落とすことが
できるというのが電動歯ブラシの特徴です。
しかも、その振動数は、製品にもよりますが、1分間に3万回以上といったものも
多くなります。手みがきでは真似できません。
ところが、電動歯ブラシなのについ手を動かしてしまう人もいます。
せっかくブラシが小刻みに振動しているのに、手も動かしてしまうとしっかり
みがくことができません。つい動かしたくなる気持ちは分かりますが
それでは電動歯ブラシの良さがいきません。
また、普通の歯ブラシでもゴシゴシと力を入れて強くみがき過ぎるとエナメル質を
傷つけたり歯ぐきを退縮させたりするのと電動歯ブラシも同じです。
強くあてすぎるとやはり歯や歯ぐきを傷つけてしまうので
優しく当てることを心掛けてください。
NG例⑩電動歯ブラシを、どの歯も同じ角度であてている
もう一つ、電動歯ブラシでよくありがちなのが
歯の「近心面」に汚れが残るというパターンです。
近心という言葉は聞き慣れないかもしれん。
歯と歯が接する面のうち、手前側を使う場合、毛先を歯に当ててそのまま
数秒キープしたら、隣にスライドさせて、また数秒キープするということを繰り返します。
その際、電動歯ブラシの先端部分をピタッと歯の遠心側につけた状態で同じ角度のまま
スライドさせていくことが多く、その結果、遠心面の汚れは取り除けても近心面の汚れは
残ってしまうことが多々あるのです。
どんなに正しく磨いても、歯ブラシだけでは足りない10のNGを紹介しました。
明日は正しい歯みがきの仕方についてご紹介します。